卵巣嚢腫で術後出血の時とは?
ここでは、「卵巣嚢腫で術後出血の時」
についてお話します。
卵巣嚢腫の治療は基本的には
手術での切除になります。
全身麻酔を使用した
手術になりますので
手術の後には様々な合併症が
発生する可能性があります。
今回は、卵巣嚢腫の
術後の出血についてご紹介します。
卵巣嚢腫の手術後に
起こりやすい合併症とは?
全身麻酔を使った手術の場合、
一般的に以下のような
合併症の出現が考えられます。
・術後出血
術後出血は手術直後から
48時間以内に発生します。
術後出血の原因は様々ですが、
血管がもろくなっている人では
血管を縫合した糸が取れてしまったり、
毛細血管から出血して
しまったりすることで
術後出血が起きてしまうことがあります。
また、手術中は体動がないことや
点滴の温度が低いこと、
手術室の気温などの要因により
体温が低下します。
体温の低下は血液の
凝固機能の低下につながるため、
術後出血を誘発しやすくなります。
・縫合不全
手術の後の傷は手術か
ら約7日間で組織が
生まれ変わり治癒します。
しかし、栄養状態が悪い場合や
縫合部周辺に感染が
起きてしまった場合など、
手術の傷がうまくくっつかずに
縫合不全となってしまうことがあります。
縫合不全が起きると発熱や脈拍増加、
白血球増加、炎症反応の上昇
などの症状を引き起こします。
皮膚の表面ではなく、体の内部に
縫合不全が起きてしまった場合には
腹膜炎などが起きてしまう
場合がありますので
再手術となることがあります。
縫合不全は手術後
4〜10日頃に起こります。
・深部静脈血栓症
手術中は全身麻酔をかけるため、
体動ができません。
また、手術後も傷の痛みや
安静指示などのために
体動が少なくなります。
体動が少なくなると下肢の細い静脈に
血栓という血の塊ができやすくなり、
その血栓が心臓や肺にとんでしまうと
大変なことになります。
深部静脈血栓症は手術の直後から
1週間程度まで起こる可能性があり、
弾性ストッキングの着用や
早期の離床で予防を図る
病院が多いです。
・その他
そのほかにも、手術の傷跡が
傷む術後疼痛や、
麻酔による呼吸の抑制による
呼吸器合併症、術後の腸閉塞
など様々な合併症があります。
卵巣嚢腫の手術後は
出血が起こりやすいの?
卵巣嚢腫の手術は開腹手術と
腹腔鏡手術の2種類があります。
・開腹手術の場合
開腹手術とは、お腹を
10センチほど切開して視野を確保し、
そこから卵巣嚢腫を
切除する手術を行います。
先ほどご紹介した全身麻酔の
合併症である術後出血のリスクは
消化管などの開腹手術の場合と
ほぼ変わりありません。
開腹手術は腹腔鏡手術に
比べて手技が簡単ですし、
視野も確保しやすいため、
術後のトラブルが
起こりにくいと言えます。
・腹腔鏡手術の場合
腹腔鏡手術とはお腹に
数か所小さな穴をあけて
そこから腹腔鏡というカメラと
特殊な手術器具を入れて
行う手術を言います。
傷跡が小さいため跡もほとんど残らず、
術後の回復も早いため、近年では
腹腔鏡手術で治療をしたいという
患者も増加しています。
ですが、腹腔鏡手術を
実施している病院は
まだまだ少ないのが現状で、
近所にある病院が
腹腔鏡手術で卵巣嚢腫を
摘出できる病院であるとはかぎりません。
その理由は、腹腔鏡手術は難易度が高く、
腹腔鏡手術で卵巣嚢腫を切除できる医師は
まだまだ少ないからです。
腹腔鏡手術は、直接術野を
確認するのではなく、
腹腔鏡というカメラで写した
映像をモニターで確認しながら
手術を行います。
そのため、手術部位を
うまくカメラに収めないと
切除が必要な部位を見逃したり、
縫合が必要な部位を
見逃して縫合が十分に
できなかったりという
トラブルが起こります。
また、手術中に何かの拍子で
出血が起きても、開腹手術の場合は
目視と手で直接触れた感覚で
出血点を特定できますが、
腹腔鏡手術の場合は
出血点を探すのも一苦労です。
カメラに映った部分しか見えず、
自分の手で手術部位に
触れているわけではないので
手の感触で出血点を
さがすこともできません。
以上のような腹腔鏡手術の弱みにより、
術後、縫合がうまくいっていないと
出血を起こすリスクが高いということです。
このように、卵巣嚢腫は手術が終わっても
体の内部で出血が起きる
可能性がゼロではありません。
手術が終わったからといって
安心するのではなく術後に自分の体に
調子の悪い部分がないかどうか
きちんと看護師や医師に伝えることが
非常に重要になります。