卵巣嚢腫手術後に癒着する時とは?
ここでは、「卵巣嚢腫手術後に癒着する時」
についてお話します。
卵巣嚢腫の手術は開腹手術と
腹腔鏡手術の2つの術式があります。
手術の後にはさまざまな
合併症がありますが、
手術部位が周囲の組織と
癒着してしまうことがあります。
今回は卵巣嚢腫の
手術後の癒着についてご紹介します。
手術後の癒着とは?
「卵巣嚢腫 癒着」
では、発症した時点で癒着を起こしやすい
タイプの卵巣嚢腫についてご紹介しましたが、
手術をしたからと言って安心してはいけません。
術後はどのタイプの卵巣嚢腫であったとしても
癒着が起こる可能性があります。
人間の体は、傷を修復するときに
皮膚同士や組織同士をくっつけて
もとの体の状態に戻そうとします。
しかし、そのメカニズムが起こる際に
もともとはくっついていなかった
組織同士がくっついてしまうことを
「癒着」
と呼びます。
術後に組織同士の癒着が起きると、
術後に手術部位周辺の痛みが起きたり、
次に何かの手術をしなければならない
状態になったときの出血の
原因になったり、
視野の確保ができなくなったり
という影響があります。
術式による癒着の危険の違い
手術後の癒着は傷口が
大きいほど起こりやすいです。
腹腔鏡手術の場合は小さな穴を
お腹に4〜6か所開けて行う手術であり、
傷口が小さいため、癒着は
比較的起こりにくいとされています。
一方、開腹手術では癒着が
起こりやすいことが問題です。
開腹手術は卵巣嚢腫が大きく、
腹腔鏡での摘出が困難な場合や
視野を確実に確保したい場合に行われます。
腹部を縦10センチくらい切開し、
開創器という器具を使って
視野を確保して手術を行います。
腹直筋に傷をつけることになるため、
術後の回復にも時間がかかり、
傷が大きい分、癒着する可能性も高いです。
癒着がおこるとどのような症状がでるのか
・腹痛
本来はくっついていなかった
部分がくっつくことにより
周囲の組織が牽引され、
体動時や排便時にうずくような
腹痛が起こります。
・便秘
婦人科系の手術に限らず、
開腹手術をすると
「腸管癒着症」
という症状になりやすいです。
腸管癒着症とは名前の通り、
腸が癒着することによって
便の通り道が狭くなり、
便秘や腹痛、嘔気・嘔吐などが
起こります。
ひどくなると腸閉塞といって、
腸がふさがって
詰まってしまうこともあります。
腸閉塞になると突然の刺すような
痛みが現れ、歩くことが困難になります。
発熱、頻脈、脱水、尿量の減少など、
様々な症状が現れて、放置しておくと
命の危険に直面します。
癒着の予防はどのようにするのか?
癒着が起こりやすいことは
医師がよく知っていますので、
癒着が起こらないような対策を
様々な方法でとっていきます。
・手術の段階で行うこと
手術操作や使用器具の工夫で
癒着を防止することができます。
体内にできるだけ異物を残さないように、
近年では時間がたつと体内に吸収されて
尿として排泄されるタイプの
縫合糸が使用されています。
また、癒着を予防するための
特殊なフィルムシートを
使用している病院もあります。
このシートは組織同士の癒着を予防し、
傷が治るころには体内に吸収されて
尿として排泄されるように
できています。
・術後に行うこと
癒着の予防には、手術後に
早めに体を動かす必要があります。
これを医療用語では
「早期離床」
と呼ぶのですが、ずっとベッドに
横になっているのではなく、
歩いたり、トイレに行ったりという
日常生活動作に早めに
なれるということになります。
適度に体を動かすことで、
本来くっついていない組織同士の
癒着を防止することができます。
また、腸管に負担をかけないような
食生活の工夫が必要で、
病院での食事はおかゆから始まり、
徐々に食事量をアップ
させるように工夫されています。
早食いや過食に
注意することも非常に重要です。
このように、卵巣嚢腫の治療は
手術をしたからと言って
完了したわけではありません。
手術後には様々な合併症があり、
開腹手術の場合にはとくに
癒着症状に気を付けなければいけません。
自分の体の変化に敏感になり、
すぐに医師に伝えるようにしましょう。